ブログで学ぶ〜日商簿記2級チャレンジ #14 特殊商品売買〜試用販売・予約販売〜
試用販売とは
試用販売とは商品を一定期間“試用(お試しで使ってもらう)”してもらい、その後気に入ったら買い取ってもらう(気に入らなければ返品してもらう)という特殊な販売形態である。
化粧品や健康関連グッズなど、夜中のTVショッピングで良く見かけるアレをイメージしてもらえば分かりやすいだろう。
いつ売上を認識すればよいのか?
試用販売のポイントは『どの時点で売上を認識するのか?』という一点のみである。
では、いつの時点で売上を認識するのだろう。商品を送った時だろうか?
いや、試用販売の場合は『商品の購入の意思表示があった時点』で売上を認識するのだ。
なぜなら、売上等の収益は実現主義(※)により“確実なもの”だけを認識することとされており、したがって『買取意思の表示があった=売上が実現した』と考えるためである。
※実現主義とは、収益の認識を債権の確定だけでなく、収益が実現した時点まで遅らせるという原則。
2通りの会計処理方法
具体的な会計処理方法としては(1)手許商品区分法と(2)対照勘定法の2通りがある。
いずれも委託販売や割賦販売で既に学習済みの会計処理方法だ。
◎手許商品区分法
(1)商品の送付時
手許商品と区別するために、仕入勘定から「試用品」勘定へ振替える。
(借方)試用品 ×× /(貸方)仕入 ××
(2)返品時
試用品勘定から仕入勘定へ戻す。(発送時の逆仕訳)
(借方)仕入 ×× /(貸方)試用品 ××
(3)買取意思の表示があった時
売上を計上すると同時に、売れた分の原価(売上原価)を仕入勘定へ振替える(その都度法)。
(借方)売掛金※ ×× /(貸方)試用品売上 ××
(借方)仕入 ×× /(貸方)試用品 ××
※試用販売は割賦販売などとは異なり通常の掛取引となるため「売掛金」勘定でOK。もちろん「試用品売掛金」といった別勘定で管理することも可。
◎対照勘定法
(1)商品の送付時
下記の仕訳による備忘記録を行う(売価で記入)。
なお、対照勘定法で使用する勘定科目名は問題の指示に従うこと。
(借方)試用販売売掛金 ×× /(貸方)試用仮売上 ××
(2)返品時
返品の分だけ備忘記録を逆仕訳で消しておく。
(借方)試用仮売上 ×× /(貸方)試用販売売掛金 ××
(3)買取意思の表示があった時
売上を計上すると同時に、同額の備忘記録を逆仕訳で消しておく。
(借方)売掛金 ×× /(貸方)試用品売上 ××
(借方)試用仮売上 ×× /(貸方)試用販売売掛金 ××
(※参考)決算時の処理
買取意思表のないものは、その原価分を期末商品棚卸高として処理をする。
(借方)試用品(又は繰越商品) ×× /(貸方)仕入 ××
以上が試用販売についての「売上の認識」と「会計処理方法」である。
会計処理方法については特に目新しいものはないが、試用販売は本試験でも過去に何度も出題されているため十分に練習をしておこう。
予約販売は予約金の取り扱いに注意
予約販売については特殊な考え方や会計処理はない。
予約時に予約金を受け取った時点で、これを「前受金」勘定(または「予約販売前受金」勘定でも可)で処理することだけ注意しておけば大丈夫だ。
(1)予約金の受取時
(借方)現金預金 ×× /(貸方)前受金 ××
(2)予約品の販売時
(借方)前受金 ×× /(貸方)売上 ××
(借方)現金預金 ××
練習問題
次の取引の仕訳を行いなさい。
(1)試用販売のため商品(原価:@¥30,000、売価:@¥50,000)を山口商店に3個送付した。なお、手許商品区分法で処理し、販売の都度、売上原価を仕入勘定に振り替える方法によること。
(借方)試用品 90,000 /(貸方)仕入 90,000
(2)試送した商品のうち1個については買い取る意思がないとして、商品を返送してきた。
(借方)仕 入 30,000 /(貸方)試用品 30,000
(3)残りの2個については買い取る旨の連絡を受けた。
(借方)売掛金 100,000 /(貸方)試用品売上 100,000
(借方)仕 入 60,000 /(貸方)試用品 60,000
(※参考)対照勘定法で処理した場合
(1)
(借方)試用販売売掛金 150,000 /(貸方)試用仮売上 150,000
(2)
(借方)試用仮売上 50,000 /(貸方)試用販売売掛金 50,000
(3)
(借方)売掛金 100,000 /(貸方)試用品売上 100,000
(借方)試用仮売上 100,000 /(貸方)試用販売売掛金 100,000
☆ワンポイントアドバイス:手許商品区分法と対照勘定法は原価と売価の使い分けに注意すること。
※参考問題集:段階式日商簿記ワークブック2級 税務経理協会
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