簿記・虎の穴 #17 やっぱり、売上原価を売上原価の行で計算する問題が出題されたね

 

売上原価を算定するための仕訳、キミは大丈夫かな?

売上原価を仕入勘定で算定する場合(精算表の問題では「仕入の行」で算定すると表現する)は、例の「し・くり・くり・し」の語呂合わせで憶えている人も多いんじゃないだろうか。

でも、先日実施された第134回の日商簿記検定試験のように、「売上原価は売上原価勘定で算定せよ」なんて指示がされた途端にチンプンカンプンになっちゃった人もかなりいたみたいだね。

そこで今回は、もう一度「売上原価を売上原価勘定で算定する方法」を確認してみることにしよう。

まず、売上原価の算定方法の基本的な考え方なんだけど、これは「簿記・虎の穴 #05 分記法と三分法(後編) 」で詳しく解説しているから、イマイチ自信がない人は目を通しておいて欲しい。

さて、売上原価の算定は上記「虎の穴」の記事にもあるように、計算式で表すと次のようになるんだったね。

売上原価=期首商品棚卸高+当期純仕入高-期末商品棚卸高

つまり、当期純仕入高に期首の商品在庫をプラスして、そのトータルから期末の在庫をマイナスしているんだ。
もっと簡単に言うと、「持ってた分」から「残っている分」をマイナスすれば「売れた分」が解るでしょってことだね。

これを仕訳と勘定記入で表現したものが「し・くり・くり・し」といった仕訳になるんだったね。

まず「し・くり」というのが、前期から繰り越してきた期首の在庫(繰越商品勘定の期首有高)を仕入勘定にプラス(振り替える)ための仕訳のことで、次の仕訳となる。

(借方)仕  入 ××× /(貸方)繰越商品 ×××

続いて「くり・し」で、期末に残った在庫(商品の期末有高)を仕入勘定からマイナスして繰越商品勘定へ振り替えることになる。
仕訳は次の通り。

(借方)繰越商品 ××× /(貸方)仕  入 ×××

ここまではOKかな?
これが三分法の基本的な決算修正仕訳となるんだ。

それじゃ、売上原価勘定で売上原価を算定するにはどうすればどうすればいいんだろう。
そう、基本は同じ。
ただ、計算する勘定が「仕入」から「売上原価」に替わるってところがポインなんだ。

実は売上原価を売上原価勘定で算定する方法については、簿記塾オッジ公式メルマガの4月26日号で取り上げていたので、以下に記事を転載しておくね。(※一部加筆修正)

–(ここから)–

虎の穴でも説明したように、三分法では「仕入」勘定に期首商品棚卸高と期末商品棚卸高を加減して売上原価を算定するんだ。
これを「売上原価は仕入の行で計算する」と表現している。

この「行」っていうのは精算表を作る際に仕入の行で「期首商品棚卸高+当期商品純仕入高-期末商品棚卸高」を計算することになるので、このような表現になっているんだ。

では、本題の「売上原価の行で計算する場合」はどうするのか?

売上原価の計算方法は同じなんだけど、計算する勘定が「仕入」から「売上原価」に替わるところに注意しなければならない。
つまり、期首商品棚卸高は「繰越商品」勘定から「売上原価」勘定へ振替えることになる…というのが重要ポイントなんだ。

勘定記入のイメージはこうだね。

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したがって、期首商品棚卸高1,000円を売上原価勘定に振り替える仕訳は次のようになる。

(1) (借方)売上原価 1,000 /(貸方)繰越商品 1,000

ピンときた人もいるんじゃないかな。そう、「仕入」勘定を「売上原価」勘定に置き換えちゃえばいいんだ。
同じように期末商品棚卸高も「売上原価」勘定から「繰越商品」勘定に振替えればいい。

(2) (借方)繰越商品 3,000 /(貸方)売上原価 3,000

でも、これだけじゃ、まだ足りないモノがある。

なにが足りないのかって?
そう、当期仕入高の処理が抜けているんだね。

仕入勘定で売上原価を算定する際は、仕入勘定そのものにに最初から当期仕入高が記入してあったよね。
だから、そこに期首と期末の棚卸高を加減するだけで売上原価を算定することができるんだ。

しかし、売上原価勘定を用いて算定する場合はちょっと注意が必要になる。
実は「売上原価」勘定ってのは、売上原価を計算するためだけに用いる勘定なんだ。
つまり、売上原価勘定は「最初は何にも数字が入っていない“空っぽ”の状態」なんだね。
したがって、これに期首と期末の棚卸高を加減しただけじゃ、当然、売上原価にはならない。

それじゃ、肝心の当期仕入高はどこにあるんだろう?

おっ、スルドイね。そう、仕入勘定に記入されてるよね。
そこで、当期の純仕入高を「仕入」勘定から「売上原価」勘定へ振替えるために次の仕訳が必要となる。

(3) (借方)売上原価 20,000 /(貸方)仕 入 20,000

結果、(1)~(3)の仕訳を一つにまとめると次のようになるんだ。

(借方)売上原価 20,000 /(貸方)仕  入 20,000 ←当期仕入高を売上原価勘定へ振替
(借方)売上原価  1,000 /(貸方)繰越商品  1,000 ←期首商品棚卸高の振替
(借方)繰越商品  3,000 /(貸方)売上原価  3,000 ←期末商品棚卸高の振替

どうかな?
仕訳だけを見ると難しそうに見えるけど、勘定図と見比べならが仕訳を辿ればそんなに難しいことをやっているワケではないことが解ってもらえるんじゃないかな。

この論点は、近年日商簿記3級試験で頻繁に出題されている重要項目の一つでもあるから、
6月試験の受験予定者は要注意だ!

–(ここまで)–

さて、先日、インターネットであちこちの情報を見ていたところ、面白い語呂合わせを見つけたんだ。
それは売上原価を売上原価勘定で算定する場合の仕訳の語呂合わせで、「うくうしくう」ってやつ。

浮く?・牛・食う」…面白い語呂合わせだなぁ(笑)なんて感心しちゃったんで、これから使ってみようかな(^^)

僕もこの手の語呂合わせは結構好きなんだよ。
「語呂合わせで丸暗記」ってのは感心しないけど、きちんと「意味」が解った上であれば、このような語呂合わせも一つの方法として積極的に取り入れてもらって構わないと思う。
慣れないうちは記憶を辿る「きっかけ」が必要だし、語呂合わせは記憶を呼び出す“タグ”としてピッタリだからね。

簿記会計には他にも色々な語呂合わせがあるから、みんなも何か面白い語呂合わせを知っていたら是非教えてね。

折角だから新しい語呂合わせを作ってみるってのも良いかもね。

それじゃ、また次回。

Ci vediamo !

 

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