ブログで学ぶ~日商簿記2級チャレンジ #06 手形の裏書・割引と保証債務

2級チャレンジ

 

 

 

手形の裏書時に行う新たな仕訳とは?

今回は手形の裏書譲渡に伴う保証債務について。
債務の保証を行った場合とは異なるので注意が必要だ。

手形の裏書譲渡時に追加される新たな仕訳

まず、3級で学習した手形の裏書譲渡時の仕訳を思い出してみよう。

(借方)買掛金など ××× /(貸方)受取手形 ×××

3級では上記の仕訳のように、受取手形勘定(資産)の減少という処理を行っていたはずだ。
2級では、この仕訳に次の仕訳が追加される。

(借方)保証債務費用 ×× /(貸方)保証債務 ××

この勘定科目に見覚えがある人も多いのではないだろうか。
そう、この貸方側の保証債務という勘定科目は、前々回の「日商簿記2級チャレンジ #04 保証債務」で取り上げた勘定科目だ。

その時に学習した備忘記録は次の仕訳だったはずだ。

(借方)保証債務見返 ××× /(貸方)保証債務 ×××

実際、2級を学習していて、ココで引っかかっている人も多いのではないだろうか。

仕訳そのものは書けるんだけど、保証債務の時と何が違うのかがよく解らない……。

この記事を読んでいる人の中にも、そう思っている人がいるかもしれない。

実は今回の手形の裏書譲渡に伴う保証債務は、前々回で学んだ備忘記録の保証債務とは“別モノ”なのである。
ちょっとややこしいのだが、「同姓同名の別人」みたいなものだと思ってもらえば良い。

今回の仕訳の借方科目「保証債務費用」は費用として、貸方科目の「保証債務」は負債として、それぞれ損益計算書や貸借対照表に計上される
この点が、「単なるメモ書き」だった前々回の備忘記録と大きく異る点だ。

裏書譲渡時の債務保証とは何か?

この論点についての詳細は税理士試験の簿記論レベルの話になってしまうため、簡単にかいつまんで話しをしておこう。
興味のある人はじっくりと目を通して欲しい。

手形には独特のルールがあって、譲渡したら「後は知りません、ハイそれまでヨ」という訳にはいかない。
手形は、これを裏書(割引)すると「遡及義務(さっきゅうぎむ)」というものが生じる。

これは手形を裏書した際に、“手形の支払人が支払い不能となった場合は、譲渡先に対して手形代金を支払う義務を負わなければならない”というものなのだ。
そう、件の偶発債務が生じるである。

この偶発債務を帳簿上に記録する方法として、以前までは前々回に学習した保証債務と同様に下記仕訳例のような「対照勘定法」や、「評価勘定法」と呼ばれる備忘記録(メモ書き)を行っていた。

(借方)買掛金など    ××× /(貸方)受取手形   ×××
(借方)手形裏書義務見返 ××× /(貸方)手形裏書義務 ×××

ところが、新たに「金融商品に関する会計基準」というルールが採用され、これに伴って手形を譲渡した後に残る遡及義務を保証債務という負債として認識することになったのだ。

したがって、会計処理も従来の単なる備忘記録(メモ書き)としてではなく、簿記上の取引として処理しなければならなくなったのである。

具体的な計算&仕訳例

規定では保証債務(遡及義務)の評価は「時価で評価する」となっているが、試験では「手形額面の何%を保証債務として計上する」などと具体的に指定してくるので心配は不要だ。

基本的には貸倒引当金の設定にかなり近い考え方なので、裏書(割引)した手形の貸倒リスクの計上だと考え、下記例題のように貸倒引当金と同様に処理してもらって構わない。

[例題]
福岡商店に対する買掛金支払いのため、長崎商店振出しの約束手形¥100,000を裏書譲渡した。なお、手形金額の3%の保証債務を計上する。

(解答・解説)
(借方)買掛金   100,000 /(貸方)受取手形 100,000
(借方)保証債務費用 3,000 /(貸方)保証債務  3,000

保証債務の計算=100,000×3%=¥3,000

【その後、無事に決済された場合
上記の手形が無事決済された旨、連絡を受けた。

(借方)保証債務 3,000 /(貸方)保証債務取崩益(※1) 3,000

【その後、不渡りになった場合
上記の手形が不渡りとなったため、満期日以降の利息¥1,500とともに小切手を振り出した。なお、不渡りとなった手形については直ちに長崎商店に対して償還請求を行った。

(借方)不渡手形(※2)101,500 /(貸方)現金預金   101,500
(借方)保証債務     3,000 /(貸方)保証債務取崩益 3,000

(※1)
決済時・不渡り時に保証債務取崩益勘定(収益)を使うのは、設定時の保証債務費用を打ち消すための処理で、貸倒引当金の戻入れ時に貸倒引当金戻入勘定(収益)を用いるのと同様の意味である。

(※2)
裏書譲渡した手形が不渡りになった場合は当社に支払い義務が生じるため、まず、(1)手形の所持人に請求金額を支払い(2)その後に手形の振出人に償還請求(代金の支払い請求)を行う。
その際の償還請求費用や延滞利息も不渡手形勘定(不良債権を表す資産勘定)に含めること。

(参考)手形の不渡りとは?
手形の所持人が満期日に支払い請求したにもかかわらず、支払人が支払いを拒絶して手形代金を受け取ることができなくなること。
この場合、手形の所持人は手形代金のほかに、法定利息や償還請求に要した費用を請求することができる。

次のパターンの設問には要注意!

[例題]
福岡商店に対する買掛金支払いのため、長崎商店振出しの約束手形¥100,000を裏書譲渡した。なお、手形金額の3%の保証債務を計上する。また、この約束手形には3%の貸倒引当金が設定されている。

(解答・解説)

(借方)買 掛 金 100,000 /(貸方)受取手形   100,000
(借方)保証債務費用 3,000 /(貸方)保証債務    3,000
(借方)貸倒引当金  3,000 /(貸方)貸倒引当金戻入 3,000

手形裏書と保証債務設定の仕訳は先の例題と同じだが、この手形には「3%の貸倒引当金が設定されていた」という記述に注目しなければならない。

裏書によって手許の受取手形勘定が減少するわけなので、当然、これに係る貸倒引当金は不要となる。
したがって、貸倒引当金の戻入れ処理が必要になるのだ。

この処理を忘れると、同一の手形に対して二重にリスクを計上することになる(費用の二重計上)ので注意が必要だ。

まとめ

今回学習した項目は、実際に過去問題においての出題頻度は低い。
しかし、それはあくまで過去の話しである。

ご存知の通り、近年の日商簿記検定試験の出題傾向は大きく変わりつつある。

手形の裏書譲渡に関する保証債務の設問が、いつ出題されてもおかしくはない。
債務の保証を行った場合の会計処理と混同しないよう、十分に練習しておく必要がある。

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