簿記・虎の穴 #03 現金過不足はこう解け!
簿記3級を教えていると、誰しもが間違えるポイントや問題ってのがいくつかあります。
そんな中で簿記を学び始めたばかりの人に多いのが「現金過不足」。
基本問題だとバッチリ解けるのに、検定レベルになるとさっぱりって人いませんか?
例えば次の例題を見てください。
【問題】
現金の実際有高が帳簿残高より20,000円不足していたため、かねて現金過不足勘定で処理しておいたが、その原因を調査したところ、支払保険料25,000円と売掛金の回収額10,000円の記入漏れであることが判明した。なお、残額については原因不明のため、雑損または雑益として処理することとした。
さぁて、どう解きましょうか?
もし、あなたが解き方の手順をきちんと知りたいのであれば、そのまま読み続けてください。
そうでなければ(簡単な解法さえ知ることができれば良いというのであれば)途中は読み飛ばして、最後の10行くらいを読んでおけば宜しいかと……。
さて、ここを読んでいるということは、あなたは解き方の手順をきちんと知りたいということですね。
よろしいでしょう、それではちょいと解説してみましょうか。
現金過不足の問題を解く際に確認しておきたい一番のポイントというのは、
現金過不足が生じる原因は「現金過剰」と「現金不足」のどちらか一方だけではない
ということです。
現金過不足の問題を苦手にしている人は、大抵ここら辺りがあやふやです。
どういうことかと言うと、こうです。
問題文の「現金の実際有高が帳簿残高より20,000円不足していたため、かねて現金過不足勘定で処理しておいた」という記述で、この会社は現金過不足を発見した際に次の仕訳を行っていたことが推定できます。
(借方)現金過不足 20,000 / (貸方)現 金 20,000
うん、これは問題ありません。OKです。
ところが現金過不足の問題が苦手だという人は、この仕訳を単純に次のように考えてしまうんですね。
「この現金過不足の原因は、現金が不足したことによってのみ生じたものである」と。
確かに支払保険料の記入漏れについては、これで説明がつくのですが、もう一つの原因である「売掛金の回収」については説明がつかなくなります。
だって「売掛金の回収」の記入漏れは現金過剰の原因ですからね。
そうすると、
「あれれ…現金不足の原因を調べていたのに“現金過剰の原因”がでてきたぞ…なぜだ?あれっ、俺(私)何か間違ってる?あれっ?あれ?」
ってな具合に頭の中がパニックになって、思考停止状態に…でもって「先生、わかりません。」ってなちゃうんですね。
いいですか、
上の考え方をしている人の頭の中では現金過不足勘定が次のようになっています。
これはこれで間違ってはないのですが、これだと過不足の原因が現金不足の原因のみだと誤解しやすいのです。
つまり、次のような思考パターンに陥っちゃうんですね。
・現金過不足勘定の借方側に残高がある。
↓
・これは現金不足を意味している。
↓
・ということは、現金不足の原因を調べればいいんだよね!
↓
・支払保険料の記入漏れは現金不足の原因だから…うん、OK。
↓
・売掛金回収の記入漏れか…。
↓
・あれっ?これって現金過剰の原因じゃね?
↓
・現金不足の原因を調べてたのに、なんで現金過剰の原因が出てくんの?
↓
・現金過剰なら、現金過不足勘定は貸方残高になってなくちゃおかしくね?
↓
・??????
とまぁ、こんな感じです。
では、どう考えればよいのか?
もう一度おさらいをしておくと、
現金過不足が生じる原因は「現金過剰」と「現金不足」のどちらか一方だけではない
現金過不足が生じる原因は「現金過剰」と「現金不足」のどちらか一方だけではない
ということでしたね。
大事なことなので二回書いてみました。
つまり↓こう考えればよいのです。
これだと、現金不足と現金過剰の両方の原因により、結果として現金不足20,000円が生じているということが理解していただけるのではないでしょうか。
現金過不足は何も現金不足だけや現金過剰だけで生じるものではありません。
その名前の通り、この二つの原因が絡んで過不足が生じるのです。
そうすると。
現金不足の原因は支払保険料の記入漏れが判明したことで解決します。
また、現金過剰の現金は売掛金回収の記入漏れが判明したことで解決するのです。
で、もしも今回の現金過不足20,000円の原因がこの二つだけなら下記の仕訳を行えば現金過不足勘定の残高はゼロになるはずなのです。
でも、実際に転記してみるとこれが一致しないんですね。
(1)支払保険料25,000円の記入漏れの修正
(借方)支払保険料 25,000 /(貸方)現金過不足 25,000
(2)売掛金回収10,000円の記入漏れの修正
(借方)現金過不足 10,000 /(貸方)売掛金 10,000
そう、現金不足の理由が「あと5,000円」不明なのです。
でも問題文にこう書いてあったはずです。
「なお、残額については原因不明のため、雑損または雑益として処理することとした」と。
したがって、今回は原因不明の現金不足5,000円を雑損として処理しておけばよいでしょう。
(※残高が現金過剰側なら雑益ですね)
よって、
(3)原因不明分の処理
(借方)雑 損 5,000 /(貸方)現金過不足 5,000
となるワケです。
結果、この問題の解答は(1),(2),(3)の仕訳をまとめて……
(借方)支払保険料 25,000 /(貸方)現金過不足 20,000
(借方)雑損 05,000 /(貸方)売掛金 10,000
としておけばOKです。
これが現金過不足の解き方の考え方です。
どうです、なんだか自分にもできそうな気になってきたでしょう。
意味さえ解っていれば、どんな応用問題であっても基本の考え方で解くことができます。
苦手意識を持たずに、迷ったら一呼吸おいて基本に立ち返りましょう。
えっ、意味は解るけど面倒くさい?
もっと簡単に解ける方法は無いかですって。
もちろんありますよ。
それもとびっきり簡単な方法が。
では、同じ問題でやってみましょうか。
ポイントは「最終的に現金過不足勘定は相殺されてゼロになる」ってトコロ。
つまりこうです。
問題の前提として↓この仕訳が行われていますので、
(借方)現金過不足 20,000 / (貸方)現 金 20,000
(1)現金過不足勘定は相殺されて最終的にゼロになるワケですから、とりあえず最初に現金過不足勘定を貸方側で消し込んでしまいます。
(借方) /(貸方)現金過不足 20,000
(2)次に理由が判明した支払保険料25,000円と売掛金回収10,000円の修正を追加します。
(借方)支払保険料 25,000 /(貸方)現金過不足 20,000
________ 00,0000_/(貸方)売掛金 10,000
(3)最後に貸借差額で雑損または雑益を記入します。
(借方)支払保険料 25,000 /(貸方)現金過不足 20,000
(借方)雑損 05,000 /(貸方)売掛金 10,000
これでお終いです。どうです、簡単でしょう。
まぁ、そんなに凝った問題でなければこの方法でちゃちゃっと解答するのも一つの手です。ただ、あくまで簡易的な解き方ですから、そのことはお忘れなく。
とりあえずは好きなほうで解いちゃってくださいな。
それでは、また次回。