商品の積送と同時に荷為替を取り組んだ場合の受託者側の処理はどうなるのだろう?

 

商品の積送と同時に荷為替を取り組む場合、委託者側の処理は頻繁に出題されるのでご存知の方も多いと思う。

※荷為替の取り組みについては簿記・虎の穴 #16 これでバッチリ!委託販売と荷為替を組み合わせた問題はこう解け!!で細かく解説しているので、イマイチ苦手な人は参考にして欲しい。

では、この場合の受託者側の処理はどうなるのだろう?

この場合、受託者は荷為替を引き受けるわけだ。
したがって、手形の支払い義務が生じるため次のように貸方側で支払手形勘定を計上すればよい。

(借方)××× /(貸方)支払手形 ×××

ここまでは、大丈夫であろう。
では、借方の勘定科目はどうすればいい?

この場合、受託者は預かった商品を販売する前に、その売上代金の一部を委託者に前払いすることになるため「前払金」勘定を用いるのが適切であろう。
したがって、仕訳は次のようになる。

(借方)前払金 ××× /(貸方)支払手形 ×××

この仕訳を見て、あれっ?と思った人もいるのではないだろうか。
あなたが持っている手元のテキストや参考書では次の仕訳になっているはずだ。

(借方)受託販売 ××× /(貸方)支払手形 ×××

そう、借方側の勘定科目は前払金ではなく、「受託販売」になっているのである。
今回の記事は、この受託販売勘定についての話しなのだ。

 

受託販売勘定とは、何なのか?

受託販売勘定とは、委託者に対する債権・債務を一つにまとめた混合勘定と呼ばれる特殊な勘定である。
この混合勘定、実は3級でも学習しているのだが、憶えているだろうか。

そう、当座預金(資産)と当座借越(負債)を一つにまとめた当座勘定である。
当座勘定も混合勘定の一つだったのだ。

受託販売では委託者に対して、様々な債権(立替金)や債務(預り金)が生じる。
その際、これらの債権・債務を「立替金」や「預り金」として個別の勘定科目で処理すると、後々、委託者に対する債権・債務がどれだけあるのかといった管理し辛くなってしまうのだ。

そこで、委託者に対する債権・債務を「受託販売」という混合勘定で一括して記録することで、簡単に、かつ、合理的にしようというワケなのである。

例えば、受託品の引取り費用10,000円(※委託者負担)を受託者が立て替えて支払った場合、普通に考えると次の仕訳となる。

(借方)立替金 10,000 /(貸方)現金預金 10,000

受託販売では委託者に対する債権・債務を受託販売勘定で処理するため、立替金を「受託販売」勘定に置き換えてあげれば良いのだ。

(借方)受託販売 10,000 /(貸方)現金預金 10,000

これと同じ理由で、先の仕訳も「前払金」が「受託販売」に置き換わっていたのである。
一方、受託品を販売した時の仕訳は次のようになる。

(借方)売掛金 ××× /(貸方)受託販売 ×××

この時の貸方側の受託販売勘定は、本来であれば預り金勘定になる(※売上ではないので注意しよう)。
なぜなら、受託品を販売しても、それはあくまで「委託者の売上」であって、受託者の売上にはならないからだ。
さらには、この場合は売上代金を、後日、委託者に送金しなければならない義務(債務)を負うことになる。

ちなみに、借方の売掛金勘定は受託者の“自分のお客さん”に対して生じた自社の債権なので、通常通り売掛金勘定を用いてOKだ。

今まで受託販売の仕訳がピンとこなかった人は、受託販売勘定を使わずに、立替金や預り金といった本来の債権・債務の勘定科目を使って仕訳を考えてみてはどうだろうか。
かなり良い勉強になるはずだ。

その他にも、この手の混合勘定には次のようなものがある。

■委託販売勘定
委託販売を行なっている場合、委託者が受託者に対する債権債務を記録するための勘定。

委託買付勘定
委託買付を行なっている場合、委託者が受託者に対する債権債務を記録するための勘定。

受託買付勘定
受託買付を行なっている場合、受託者が委託者に対する債権債務を記録するための勘定。

(補足)
委託買付とは、商品の買い付けを第三者(他社)に委託して行うこと。

日商簿記検定試験では、過去に「委託買付」の問題もよく出題されているため注意が必要だ。
といっても、基本は全て同じなので心配はしなくてもいい。

仕訳のコツは、一旦、立替金や預り金などの「本来の勘定科目」で仕訳を行い、委託者や受託者に対する債権・債務を改めて委託販売委託買付といった混合勘定に置き換えてあげることだ。
はっきり言って、やっていることは3級レベルの仕訳なので難しく考える必要はない。

 

演習問題

最後に次の問題で今回の話を締めよう。

【設問】

神田商店より、次の買付計算書とともに商品の送付を受けた。なお、神田商店に対する債権、債務は委託買付勘定を用いて処理する。
(出典:「段階式日商簿記ワークブック2商業簿記[7訂版]」税務経理協会)

買付計算書

Ⅰ 買付金額 ジャケット50着 @¥45,000 (¥2,250,000)
Ⅱ 買付諸掛
・支払運賃および保険料 ¥36,000
・保管料            ¥28,000
・買付手数料         ¥180.000
(小計             ¥244,000)
Ⅲ 買付代金合計     ¥2,494,000

Ⅳ 手付金額         ¥300,000

Ⅴ 差引請求金額     ¥2,194,000

[解説・解答]

取引内容はこうだ。
ジャケットの買付(仕入)を委託していたところ、商品の送付と上記の買付計算書を受け取った。
商品そのものの取得原価は50着×@¥45,000=¥2,250,000なのだが、仕入諸掛(買付諸掛)として¥244,000がある。
したがって、取得原価に仕入諸掛を含めて、仕入総額は¥2,494,000となる。

さて、代金の支払いについては、前もって手付金を¥300,000支払ってあるため、残額の¥2,194,000を請求されている。
この問題の最大のポイントは、この手付金(前払金)を支払っていた…という部分なのだ。

以上のことから、「本来の勘定科目」で仕訳を行うと次のようになるはずだ。

(借方)仕入  2,494,000 /(貸方)前払金  300,000
___________(貸方)買掛金 2,194,000

※このブログでは空白が左詰めされるため、仕訳の空欄部分には_(アンダーバー)を用いています。

ところが、問題の指示で神田商店に対する債権・債務は「委託買付」勘定で処理せよとあるので、「前払金(債権)」と「買掛金(債務)」をそれぞれ委託買付勘定に置き換える必要がある。

(借方)仕入  2,494,000 /(貸方)委託買付  300,000
___________(貸方)委託買付 2,194,000

最後に、上記の仕訳の委託買付勘定を一つにまとめて解答とする。

(借方)仕入 2,494,000 /(貸方)委託買付  2,494,000

どうだろうか。
受託販売については、その会計処理(仕訳)を丸暗記で憶えようとする人が多いのだが、意味(理屈)を知っていれば暗記など必要ないことがわかる。

こんな感じで、疑問に感じた箇所は腰を据えて学習すれば、簿記を「かなり解っている人」になれること間違いなしだ!

※この記事は簿記塾オッジの公式メルマガ「オッジ通信2013年7月5日号」に掲載された記事を加筆・修正したものです。

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