ブログで学ぶ~日商簿記2級チャレンジ #04 保証債務
今回は、他人の債務の保証をした場合の会計処理について。
「他人の債務の保証」というのは、平たく言えば「借金の保証人になった」ということ。
この場合の会計処理はどのようになるのだろうか?
復習-簿記上の取引とは?
まず、本題に入る前に復習しておこう。
仕訳というのは簿記上の取引が生じた場合に行うものだったが、「簿記上の取引」とは一体どのような取引のことなのか?
なんとなく解っているような、解っていないような……。
ズバリ!と答えることが出来る人はいるだろうか。
答えは「資産・負債・純資産に増減変化をもたらす取引」のこと。
これを簿記上の取引と呼んでいたのだったね。
収益・費用の発生は関係ないのか……だって?
いや、これでOKなんだ。
そもそも、収益・費用の発生は純資産を増減させる要因なので、自動的にこの中に含まれている。
したがって、上記の言い回して正しいのだ。
このように、簿記では資産・負債・純資産が増減した場合に、それを取引と認識して仕訳を行うのである。
一方、これらが増減しない場合には簿記上の取引に該当しないため、仕訳を行う必要がないのだ。
他人の債務保証を行ったは場合はどうなるのか?
本題に戻って、他人の債務の保証を行った場合を考えてみよう。
要は借金の保証人になった訳なのだが、この時、自社の資産・負債・純資産は増減するのだろうか?
そう、あくまで保証人になっただけなので、自社の資産・負債・純資産が増減することはない。
ということは、この場合は簿記上の取引に該当しないため、仕訳を行う必要は無いということになる。
ところが、保証人になったことで、将来、借主が支払不能の状態に陥った場合に、当社が代わりに支払わなくてはならない義務を負うことになる。
このように、現時点ではまだ確定した債務になっていないが、「将来一定の事象が発生した場合に法律上の債務となる可能性がある債務」のことを偶発債務と呼んでいる。
あくまで偶発債務は「可能性」であり、確定債務ではないというのがポイントだ。
したがって、保証人になるという行為そのものは簿記上の取引には該当しないのである。
しかし、確定債務になる可能性がある以上は、その情報を注意事項としてどこかに残しておく必要がある。
そこで、「こういった偶発債務が生じましたよ」というメモ(記録)を帳簿上に残す事にしたのである。
ちなみに、このメモのことを備忘記録というのだが、メモだからといって付箋や帳簿の隅に書き留めておく…という訳にはいかない。
さぁ、どうすれば良いのだろう?
備忘記録は仕訳帳に記録する
簿記では、全ての記録を「仕訳帳」に記入するルールになっている。
したがって、ここはやはり仕訳の形で備忘記録を行っておいたほうが良いだろう。
そこで、次のような対照勘定法という記録方法で仕訳を行うことにしている。
(借方)保証債務見返 ××× /(貸方)保証債務 ×××
借方側の保証債務見返とは、「対になった」「セットになった」という意味で、単純に「貸方側の保証債務勘定とセットで使う勘定科目」くらいに憶えておいて構わないだろう。
要は「メモ書き用の仕訳」といったところである。
また、これらの勘定は、あくまでもメモなので、勘定科目の集合体である試算表には出てきても、最終的な報告書としての貸借対照表や損益計算書に計上されることはない。
(※具体的には貸借対照表の注記事項として表示される。)
今回学習している対照勘定法というのは、あくまで「偶発債務を明らかにするための備忘記録(メモ)」だと考えておけば良い。
備忘記録の具体的な仕訳例
備忘記録の仕訳はとても簡単だ。
【例題】得意先八代商店の依頼により、借入金¥3,000,000の保証人となった。なお、保証債務については対照勘定法で処理する。
(解答)
(借方)保証債務見返 3,000,000 /(貸方)保証債務 3,000,000
この仕訳例のように、備忘記録は借方と貸方の勘定科目名を間違えなければ問題ない。
保証がとけた場合の仕訳例
では、保証がとけた時はどうなるのだろう。
そう、保証がとけたということは偶発債務が解消されたということになるため、備忘記録が必要なくなる。
したがって、債務保証時の反対仕訳(逆仕訳)で備忘記録を消去しておけばOKだ。
ただし、出題パターンが二通りあるので注意が必要となる。
(パターンその1)
八代商店から、借入金を無事決済したとの報告があった場合。
(借方)保証債務 3,000,000 /(貸方)保証債務見返 3,000,000
この場合は保証が解けたので、単純に反対仕訳による備忘記録の消去でOKだ。
(パターンその2)
八代商店が期日に返済できなかったため、債権者から延滞分の利息も含めた合計¥3,100,000の返済を求められ、小切手を振り出して支払った。
(借方)未収金※ 3,100,000 /(貸方)現金預金 3,100,000
(借方)保証債務 3,000,000 /(貸方)保証債務見返 3,000,000
確定債務となってしまったため、まずは備忘記録を反対仕訳で消去する。
続けて、当社が立替払いした仕訳を行おう。
この代金はあくまで当社が立替えただけであり、後日、八代商店から回収しなければならない。
したがって、借方科目を未収金や立替金、貸付金で処理するというのがポイントだ。
最後に
偶発債務の備忘記録そのものは簡単なのだが、勘定科目を貸借逆に記入する間違いが目立つ。
借方の保証債務見返勘定と、貸方の保証債務勘定。
十分な練習を行っていれば、そうそう間違えることはないのですが、本番の試験では意外な落とし穴となるため注意が必要だ。
簡単だからといって仕訳練習を疎かにせず、何度も繰り返して完全にマスターしておこう。
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