ブログで学ぶ〜日商簿記2級チャレンジ #11 特殊商品売買〜委託販売〜
特殊商品売買とは?
特殊商品売買と言っても「特別なモノ」を売っている訳ではない。
あくまで、売り方が“特殊”な商品売買という意味である。
具体的には次のような商品売買方法がある。
◎店頭で通常販売する → 一般販売
◎他店に委託して販売する → 委託販売
◎売上代金を分割払いで販売する → 割賦販売
◎試しに使ってもらって、気に入ったら買い取ってもらう → 試用販売
特殊商品売買を苦手にしている人が多いようだが、理解のコツは各種の商品売買の流れを具体的に想像することである。
例えば一般販売の流れは次のようになっていたはずだ。
(1)商品の仕入→(2)商品の販売→(3)決算処理:三分法による売上原価の算定
この時の各取引を仕訳で表すと次のようになる。
(1)商品の仕入時
(借方)仕 入 ××× /(貸方)買掛金など ×××
(2)商品の販売時
(借方)売掛金など ××× /(貸方)売 上 ×××
(3)決算時:売上原価の算定
(借方)仕 入 ×× /(貸方)繰越商品 ××
(借方)繰越商品 ×× /(貸方)仕 入 ××
どうだろうか。
取引の流れが判っていれば、それに応じた会計処理を行うだけで複雑な処理は何も無い。
特殊商品売買も同じである。
確かに聞きなれない勘定科目や用語、目新しい計算に仕訳なども多いが、だからといって物怖じする必要は全くないのだ。
特殊商品売買を自分のモノにするコツは、取引の“流れ”を意識すること。
目先のテクニックばかりに気を取られることなく、このポイントを意識した学習を心掛ければ必ずマスターすることができる。
委託販売
委託販売とは商品の販売を第三者に委託し、販売してもらう商品売買方法のことである。
委託販売における商品売買の流れを図式化すると以下のようになる。
委託者に必要な会計処理は(1)商品発送時と(2)売上計算書の受取時、(3)代金受取時の三箇所のみだ。
(1)商品の発送時の処理
商品を受託者に発送した際には手許の一般商品と発送した商品(積送品という)とを区別するため、次の仕訳で発送した商品を仕入勘定から積送品勘定(資産)へ振替える。
この会計処理方法を手許商品区分法と呼ぶ。
(借方)積送品 ××× /(貸方)仕入 ×××
(2)売上計算書の受取時の処理
通常、受託者は預かった商品を販売する都度「売上計算書」(仕切精算書ともいう)を作成して委託者に送付することになっている。
この場合、委託者は売上計算書を受け取った時点で委託商品の売上を認識して次の仕訳を行う。
(借方)積送売掛金※1 ××× /(貸方)積送品売上※2 ×××
(借方)支払手数料※3 ×××
※1 積送売掛金:一般販売分の売掛金と区別するために用いる勘定。売掛金でも可。
※2 積送品売上:一般販売分の売上と区別するために用いる勘定。売上でも可。
※3 支払手数料:受託者へ支払う手数料など。「積送諸掛」勘定でも可。
ここがポイント!売上原価の処理方法
さらに手許商品区分法はココが最大のポイントなのだが、問題の指示に次の一文がある場合は要注意だ。
「なお、これにともなう売上原価は、仕入勘定に振替える。」
一般販売の場合は決算時に件の「仕入/繰越商品・繰越商品/仕入(しくり・くりし)」の仕訳で売上原価を期末に一括して算定するのだが、手元商品区分法では異なる会計処理を行うのだ。
手元商品区分法には売上原価をその都度計上する方法(その都度法)と、期末に一括して計上する方法(一括法)の二通りの方法がある。
ちなみに日商簿記2級ではその都度法を使う(※一括法は1級の範囲)。
それでは“売上原価を仕入勘定に振替える”とはどのようなことなのだろう?
次の例で考えてみよう。
まず当期の仕入高¥100,000のうち¥30,000を受託者に積送し、その際に仕入勘定から積送品勘定に¥30,000を振替えたとしよう。
先の商品売買の流れの説明だと(1)の状態だ。
では、この積送品¥30,000が全て売れたと仮定しよう。
そうすると積送品勘定の残高¥30,000が今回の委託販売の売上原価となる。
したがって下記の仕訳でこの¥30,000を売上原価として売上原価勘定へと振替えてあげればよいのである。
(借方)売上原価 30,000 /(貸方)積送品 30,000
このように売上原価勘定が設けてあれば上記の仕訳でOKなのだが、設問の指示は「仕入勘定に振替える」となっていたはずだ。
これはどういうことなのだろう?
ピーン!ときた人もいるんじゃないだろうか。
そう、仕入勘定は当期の仕入高だけでなく、売上原価の性格を併せ持つ勘定科目だということを理解していれば簡単な話なのだ。
どういうことなのかというと、「仕入/繰越商品・繰越商品/仕入(しくり・くりし)」を行う決算修正前の仕入勘定は当期純仕入高を表しているのだが、決算修正後の仕入勘定は「期首商品棚卸高+当期純仕入高−期末商品棚卸高=売上原価」を意味しているのである。
つまり「仕入勘定=売上原価勘定」なのである。
したがって上記の指示は「積送品の売上原価¥30,000を売上原価勘定(=仕入勘定)へ振替えなさい」という意味であり、必要な仕訳と勘定の記入は次のようになる。
(借方)仕 入 30,000 /(貸方)積送品 30,000
これらのことから、売上計算書を受け取った際の最終的な仕訳は次のように考えられる。
◎売上計算書による積送品売上の仕訳
(借方)積送売掛金 ××× /(貸方)積送品売上 ×××
(借方)支払手数料 ×××
◎積送品の売上原価を仕入勘定に振替える仕訳
(借方)仕 入 ××× /(貸方)積送品 ×××
この“売上原価を仕入勘定に振替える”という意味が解らないまま仕訳を丸暗記している人も多いようだが、この考え方は未着品販売や試用販売(手許商品区分法)でも用いる考え方でもあるので、じっくりと腰を据えて身に付けてほしい。
(3)代金の受取時の処理
代金を受け取った際は次の仕訳のように積送売掛金勘定と相殺しておけばOKだ。
(借方)現金預金 ××× /(貸方)積送売掛金 ×××
以上が委託販売の基本的な仕訳パターンである。
さらに売上計算書を受け取った際の処理として次の2パターンが存在する。
◎支払手数料等も含めた総額で積送品売上を計上する方法 →「総額法」
◎支払手数料等を除外した純額で積送品売上を計上する方法 →「純額法」
他にも細かな話しはあるが、基本の流れが理解できていれば細かな部分は練習を重ねることで直ぐに身に付けることができるだろう。
また、委託販売で最も出題パターンが多いのが荷為替手形と絡めた問題だ。
これは「委託販売と言えば荷為替」と言っても良いくらいの黄金パターンである。
この論点については下記の記事で詳しく取り上げているので、是非確認しておいて欲しい。
簿記・虎の穴 #16 これでバッチリ!委託販売と荷為替を組み合わせた問題はこう解け!!
練習問題
次の取引の仕訳を示しなさい。
(1)熊本商事に商品の販売を委託するため、商品(仕入原価¥300,000、売価¥420,000)を発送した(手元商品区分法によること)。
[解答]
(借方)積送品 300,000 /(貸方)仕 入 300,000
※手元商品区分法は原価による振り替えである。
(2)熊本商事から上記の商品を全て販売した旨の連絡があり、以下のような売上計算書と、同店振り出しの小切手¥405,000が送られてきたので、ただちに当座預金に預け入れた。
なお、これにともなう売上原価は仕入勘定へ振り替える。
◎売上計算書
・売上高 ¥420,000
・保管料および手数料 ¥15,000
・差引送金高 ¥405,000
[解答]
(借方)当座預金 405,000 /(貸方)積送品売上 420,000
(借方)支払手数料 15,000
(借方)仕 入 300,000 /(貸方)積送品 300,000
※参考問題集:段階式日商簿記ワークブック2級 税務経理協会
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