ブログで学ぶ〜日商簿記2級チャレンジ

ブログで学ぶ〜日商簿記2級チャレンジ #34 売上原価対立法とは?

従来の簿記検定では一部の問題を除き、販売時に売上原価を把握せずに、決算整理事項として年度単位での売上原価の把握を仕入勘定や売上原価勘定で行うこととしてきた。
そう、例の「仕入/繰越商品・繰越商品/仕入」で売上原価を算定する三分法だ。

しかし近年の実務では商品を仕入れた段階では商品勘定に記入しておき、販売を行なった時点において、そのつど商品勘定から売上原価を売上原価勘定に振替えることが一般的になっている。
このことをうけて、日商簿記検定でも実務に沿った処理方法を2016年度の検定から採用されることになった。
このあらたな処理方法を売上原価対立法という。

売上原価対立法とは、いうなれば分記法をベースに、三分法の良いとこ取りをしたような方法で次のような特徴がある。

◎商品の仕入時は商品勘定(資産)で処理をする。
◎販売のつど商品勘定から売上原価勘定に振替える。

つまり、商品の仕入時に商品勘定(資産)で処理するところは分記法と全く同じであるが、商品を販売した際には三分法にように売上勘定(収益)を計上すると同時に、そのつど商品勘定から売上原価を売上原価勘定に振替えるのである。
まさに分記法と三分法をミックスしたような処理なのだ。

分記法・三分法・売上原価対立法の具体的な仕訳例

それでは具体的な数字をつかって各商品売買処理の(1)仕入時 (2)売上時 (3)決算時の処理を比較してみることにしよう。
それぞれの処理の特徴とともに仕訳の相違点に注目して欲しい。

▼分記法

(1)商品¥100,000を仕入れ、代金は掛けとした。

(借方)商 品 100,000
(貸方)買掛金 100,000

(2)上記商品のうち半分を¥75,000で販売し、代金は掛けとした。

(借方)売掛金 75,000
(貸方)商 品 50,000
(貸方)商品売買益 25,000

(3)決算をむかえ必要な処理をおこなう。

仕訳不要

◎分記法のメリットとデメリット

・メリット:販売のつど利益と売上原価を算定するため、財政状態(在庫)及び経営成績(利益・売上原価)をリアルタイムで把握することができる。
・デメリット:売買する商品の評価金額(原価)の即時判断が必要となり、多種多様な商品を取り扱う企業ではその維持管理が困難。

▼三分法

(1)商品¥100,000を仕入れ、代金は掛けとした。

(借方)仕 入 100,000
(貸方)買掛金 100,000

(2)上記商品のうち半分を¥75,000で販売し、代金は掛けとした。

(借方)売掛金 75,000
(貸方)売 上 75,000

(3)決算をむかえ必要な処理をおこなう。なお、期首商品棚卸高はなかった。

(借方)繰越商品 50,000
(貸方)仕  入 50,000

◎三分法のメリットとデメリット

・メリット:売上の計上時に分記法のように販売した商品の評価額を意識することなく処理を行うことができる。
・デメリット:決算時まで売上原価が算定できないため、リアルタイムでの利益管理等ができない。

▼売上原価対立法

(1)商品¥100,000を仕入れ、代金は掛けとした。

(借方)商 品 100,000
(貸方)買掛金 100,000 ※1

※1:分記法と同じ仕訳になる。

(2)上記商品のうち半分を¥75,000で販売し、代金は掛けとした。

(借方)売掛金  75,000
(貸方)売 上  75,000 ※2
(借方)売上原価 50,000
(貸方)商 品  50,000 ※3

※2:三分法と同様に売上(収益)を計上。
※3:売上原価を商品勘定から売上原価勘定へ振替え。

(3)決算をむかえ必要な処理をおこなう。

仕訳不要

◎売上原価対立法のメリットとデメリット

・メリット:販売のつど売上高と売上原価を認識するため、財政状態及び経営成績をリアルタイムで把握することができる。
・デメリット:売買する商品の評価金額(原価)の即時判断が必要となり、多種多様な商品を取り扱う企業ではその維持管理が困難。

まとめ

売上原価対立法が出題される場合は問題文中に次のように表記される。

なお、同店では商品売買に関しては、商品を仕入れたとき商品勘定に記入し、販売したときそのつど売上原価を売上原価勘定に振替える方法で記帳している。

もちろん売上原価対立法などという言葉を知らなくても指示に従えば仕訳できるように問題文が作成してあるので安心してほしい。慌てずに文中の指示に従って処理をすればOKだ。
それでは最後に日商検定の公式ウェブに掲載されているサンプル問題で仕訳を確認しておこう。

[サンプル問題1]
横浜商店は、池袋商店より商品¥150,000(@¥500×300個)を仕入れ、代金は掛けとした。なお、同店では商品売買に関しては、商品を仕入れたとき商品勘定に記入し、販売したときそのつど売上原価を売上原価勘定に振り替える方法で記帳している。

[サンプル問題2]
水戸商店は、つくば商店に商品80個(原価@¥400、売価@¥520)を売り上げ、代金は掛けとした。なお、水戸商店は商品売買に関して、商品を仕入れたとき商品勘定に記入し、販売したときそのつど売上原価を売上原価勘定に振り替える方法で記帳している。

 

【解答】

[サンプル問題1]

(借方)商 品 150,000
(貸方)買掛金 150,000

[サンプル問題2]

(借方)売掛金  41,600
(貸方)売 上  41,600
(借方)売上原価 32,000
(貸方)商 品  32,000