ブログで学ぶ〜日商簿記2級チャレンジ #39 2級の為替予約を10分でマスター

為替予約とは外貨建金銭債権債務について“あらかじめ支払う為替相場を定めておく契約”のことである。

例えばアメリカのA社から掛けで100ドル分の商品を仕入れたとする(取引時の為替相場は1ドル95円)。
この時の仕訳は次の通りだ。

(借方)仕 入 9,500
(貸方)買掛金 9,500

その後、買掛金の決済時の為替相場が1ドル100円だったらどうなるだろうか。
そう、仕訳は次のようになり、為替差損益が500円生じることになる。ここまでは前回の復習だ。

(借方)買掛金   9,500
(借方)為替差損益  500
(貸方)現金預金  10,000

しかし、為替相場の変動により債権債務の受払額が変動することは最初から解っていることなので、500円の為替差損が生じるのを指をくわえて黙って眺めているだけでは面白くない。
そこで、この受払額の変動リスクを回避する手段として、決済する銀行との間であらかじめ支払時の為替相場を定めておくのである。これを為替予約という。

為替予約を行った場合は、その取引を為替予約時の先物為替相場(予約レート)で換算することになる。
これは為替予約を行った時点で受払額の換算が予約レートで固定されてしまうためで、取引時の為替相場で換算する必要が無いからだ。つまり、最初から受払の金額を確定してしまうのである。

例えば上記例題の場合、商品の仕入れと同時に為替予約を行ったとしよう。取引時の為替相場は1ドル95円、先物為替相場(為替予約による決済時の為替レート)は1ドル98円であったとしよう。
すると取引時の仕訳は次のようになる。

(借方)仕 入 9,800
(貸方)買掛金 9,800

為替予約を行うことにより、取引発生の時点で買掛金の支払額が9,800円に固定されてしまうのだ。
その後、決済時には契約通りの予約レートで代金を支払うので、その時の仕訳は次のようになる。

(借方)買掛金 9,800円
(貸方)仕 入 9,800

このように決済時の受払額の為替相場をあらかじめ定めておく契約のことを“為替予約”と呼ぶのである。

営業取引(売掛金や買掛金)の場合の仕訳例

営業取引の発生時に為替予約を行った場合は取引時の先物為替相場(予約レート)で換算する。

(1)取引発生時

アメリカの得意先B社に対して商品100ドルを掛け販売し、取引と同時に為替予約を行った。取引時の為替相場は1ドル105円、先物為替相場は1ドル100円であった。

(借方)売掛金 10,000
(貸方)売 上 10,000

※解説:取引時の為替相場が1ドル105円だったとしても、為替予約により決済額が1ドル100円で固定化されるため換算額は100ドル×100円=10,000円として計算する。

(2)決算時

決算を迎えた。決算日の為替相場は1ドル102円である。

仕訳不要

※解説:為替予約を行ったことで既に決済金額が確定してしまっているため、決算時の為替変動による受払金額の変動を認識する必要はない。したがって仕訳は不要。

(3)決済時

B社から代金100ドルを受け取った。決済時の為替相場は1ドル98円である。

(借方)現金預金 10,000
(貸方)売掛金  10,000

※解説:決済時の為替相場が1ドル98円であっても、決済額は契約通り予約レートの1ドル100円で決済される。

ちなみに上記取引で為替予約を行わなかった場合、(1)~(3)の仕訳は次のようになる。為替予約を行った場合と比較して、その処理の違いを確認しておこう。

(1)取引時

(借方)売掛金 10,500
(貸方)売 上 10,500

(2)決算時

(借方)為替差損益 300
(貸方)売掛金   300

※解説:売掛金の簿価が100ドル×105円=10,500円から100ドル×102円=10,200円に減ってしまうため、簿価を切り下げるとともに差額を為替差損益として計上する。

(3)決済時

(借方)現金預金  9,800
(借方)為替差損益  400
(貸方)売掛金   10,200

※解説:売掛金の簿価10,200円と回収額9,800円の換算差額を為替差損益として計上する。

結局のところ、10,500円の売掛金を9,800円でしか回収できなかっため、為替変動による差損益が700円生じてしまったことになる。
このような為替変動によるリスクを回避(ヘッジという)するために用いるのが為替予約なのだ。
今回の為替予約を含め、リスクヘッジのための会計処理のことをヘッジ会計という。詳しくは1級で学ぶことになる。

要注意!資金取引(借入金や貸付金)の場合の仕訳例

考え方や処理の流れは先の営業取引と同じだが、これが資金取引(借入金や貸付金)になると少々注意が必要だ。
その理由は資金取引が営業取引(売掛金や買掛金)とは異なり、借入時や貸付時に“現金のやり取りが行われている”という点である。

つまり、借入時や貸付時の現金のやり取りは外貨建会計の原則通り取引時のレートで計上する必要があるため、取引発生時の為替相場(発生時レート)と先物為替相場(予約レート)との換算額で差額が生じてしまうのである。
具体的な例で確認してみよう。

(1)×1年3月1日にアメリカのC銀行から借入期間4か月の条件で100ドルを借り入れ、取引と同時に為替予約を行った。取引時の為替相場は1ドル90円、先物為替相場は1ドル98円。

上記取引の仕訳は次のようになる。

(借方)現金預金 9,000 ※1
(借方)前払費用  800 ※3
(貸方)借入金  9,800 ※2

[解説]

※1 実際に受け取った現金預金は取引時の発生時レートで換算するため、90円×100ドル=9,000円と計算する。

※2 借入金は為替予約を行ったことで決済時のレートが1ドル98円に固定されるため、98円×100ドル=9,800円として計算する。

※3 発生時レートと予約レートの違いで換算差額が生じるが、この時点では為替差損益とはせず、いったん『前払費用(または前受収益)』として処理する(←★ここがポイント!)。
その理由は、取引時の時点では為替差損益が生じる期間が未経過なので(取引日の翌日以降から為替差損益が実現し始めるため)いったん前払費用として処理しておき、決算時に当期分と時期以降の負担分を期間按分するためである。

(参考)この考え方は固定資産の割賦購入時に行った「利息部分を前払費用として処理する」のと同じ理屈である。

その後、いったん前払費用として処理された為替差額は、下記仕訳例のように決算時に当期負担部分を前払費用から為替差損へと振り替えることになる。

(2)×1年3月31日、決算日により上記前払費用のうち当期負担分を為替差損に振り替える。決算時の為替相場は1ドル93円。

(借方)為替差損益 200
(貸方)前払費用  200

※3月1日に借入期間4ヶ月の条件で借り入れているため、当期負担分(3/1~3/31)は1ヶ月のみとなる。したがって、前払費用からの振替額は800円×1/4=200円となる。

取引発生後に為替予約を行った場合(営業取引・資金取引ともに共通)

これまでの話しはいずれも取引発生と同時に為替予約を行うケースだった。
では、取引発生後に(取引発生から数週間~数か月後に)為替予約を行った場合はどうなるのだろうか。

具体的な例題で確認してみよう。なお、手元のノートやチラシの裏にでも線表を書いて時系列を追ってもらうと解りやすいだろう。

(1)取引発生時

×1年9月1日にアメリカのC銀行から借入期間3年の条件で100ドルを借り入れた。取引時の為替相場は1ドル100円である。

(借方)現金預金 10,000
(貸方)借入金  10,000

※解説:原則通り取引時の為替相場で換算する。

(2)為替予約時

×1年11月1日、上記の借入金に為替予約を行った。予約日の為替相場は1ドル102円、先物為替相場は1ドル105円であった。

(借方)為替差損益  200 ※1
(借方)長期前払費用 300 ※3
(貸方)借入金    500 ※2

[解説]

※1 取引時と為替予約時の為替相場の変動により100ドル×(102円-100円)=200円の為替差額が生じる。この差額は発生期間が既に経過しているため、当期の為替差損益として処理する。

※2 為替予約を行ったことにより、借入金の返済額が100ドル×105円=10,500円に固定されるため、取引発生時の借入金の簿価10,000円にプラス500円の修正を行う。

※3 為替予約日の為替相場と先物為替相場との違いで100ドル×(105円-102円)=300円の為替差額が生じるが、これについては先の資金取引時の仕訳例と同じ理由により前払費用として処理をする。なお、今回は借入期間が3年間なので長期前払費用として計上する。

(3)決算時

×2年3月31日、決算日により上記長期前払費用のうち当期負担分を為替差損に振り替える。決算時の為替相場は1ドル103円。

(借方)為替差損益  44
(貸方)長期前払費用 44

※解説:当期負担分は300円×5ヶ月/34ヶ月=44円(今回の例題では割り切れず端数が生じるため、説明上切り捨てた)。取引日から為替予約日まで2ヶ月が経過しているため、為替予約日から返済時までの期間は34ヶ月(借入期間36か月-2ヶ月)となる。そのうち、当期分は為替予約日11/1から決算日3/31までの5ヶ月間。

(参考)
その時点の為替相場のことを直物為替相場(じきものかわせそうば)と呼ぶ。
したがって、(1)の取引発生時の直物為替相場100円と(2)の為替予約時の直物為替相場102円との差額のような直物為替相場同士の差額のことを直直差額(じきじきさがく)と呼び、為替予約時における直物為替相場と先物為替相場との差額のことを直先差額(じきさきさがく)と呼ぶ。
上記仕訳例(2)の為替差損200円は直直差額、長期前払費用300円は直先差額になる。

2級でこれら全て出が題されるのか?

以上が為替予約についての解説だが、これら全てが2級で出題されるのかというとそうでもないのだ。
出題区分表には2級の為替予約について次のように記載してある。

為替予約の振当処理を含むものの、2級では為替予約差額は期間配分をしない

ちなみに振当処理とは今回学習した会計処理方法のことである(この他に独立処理という処理方法があるが、それは1級で学習することになっている)。

この記述をそのまま解釈すると『為替予約時によって生じる換算差額の期間配分に関する会計処理は出題しないよ』ということになる。
しかし、これだと何のことか解り辛いので具体的な例題で会計処理方法を確認しておこう。

[例題]

先日、商品を400,000ドルにて米国の顧客に掛けで売り渡し、適切に処理していたが(取引時の直物為替相場1ドル=¥115)、今後円の為替相場が上昇するリスクに備えて、全額1ドル¥113にてドルを円に売却する為替予約を締結した。ただし、当該売掛金の円換算額と、為替予約による円換算額との差額はすべて当期の損益として振当処理を行う。(第148回日商簿記検定試験2級より抜粋)

この設問のポイントは文末の「当該売掛金の円換算額と、為替予約による円換算額との差額はすべて当期の損益として振当処理を行う」という部分だ。
これは「直直差額と直先差額とを区分せずに“すべて”当期の損益(為替差損益)として処理しなさい」という指示なのだ。
したがって解答の仕訳は次のようになる。

(借方)為替差損益 800,000
(貸方)売掛金   800,000

※解説:本来であれば下記(1)のように取引時の直物為替相場と為替予約時の直物為替相場との差(直直差額)を為替差損益として、為替予約時の直物為替相場と為替予約による先物為替相場との差(直先差額)を前払費用として処理すべきである。

(1)本来の仕訳

(借方)為替差損益 xxx
(借方)前払費用  xxx
(貸方)売掛金   800,000

ところが設問には為替予約時の直物為替相場が示されていないため、直直差額と直先差額を算定することが不可能だ。
そこでポイントとなるのが先の「当該売掛金の円換算額と、為替予約による円換算額との差額はすべて当期の損益として振当処理を行う」という一文である。これは“直直差額と直先差額を区別せずに、すべて当期の為替差損益として処理しなさい”という指示だ。
したがって解答は下記(2)の仕訳となる。

(2)解答の仕訳

(借方)為替差損益 800,000
(貸方)売掛金   800,000

このように実際の試験では直直差額と直先差額とを区別させるような設問が出題されるようなことはない。
したがって、今回の資金取引の場合や取引発生後に為替予約を行った場合の決算時の期間配分に関する会計処理については参考程度に流し読みする程度でも構わないだろう。
期間配分の処理がなければ難易度はグッと低くなるため、しっかりと練習して本試験では確実に得点できるようにしておきたい。

まとめ

為替予約は決済時の為替レートを固定化するために“あらかじめ支払う為替相場を定めておく契約”のことである。

◎営業取引(売掛金や買掛金)の場合

・取引発生時(予約時)→先物為替相場(予約レート)で換算
・決算時→仕訳不要
・決済時→契約通り予約レートで決済

◎資金取引(貸付金や借入金)の場合

・取引発生時(予約時)→現金預金を換算する取引時レートと貸付金・借入金を換算する予約レートの差で生じる換算差額を前払費用(または前払収益)として処理する(←ここがポイント!)
・決算時→前払費用(または前払収益)のうち当期負担分を為替差損益に振り替える

◎取引発生後に為替予約を行った場合

・取引発生時→原則通り取引時レートで換算
・為替予約時→直直差額は為替差損益として処理、直先差額は前払費用(または前払収益)として処理(※ただし2級試験では直直差額と直先差額は区別せずに、すべて当期の為替差損益として処理する
・決算時→前払費用(または前払収益)のうち当期負担分を為替差損益に振り替える