ブログで学ぶ〜日商簿記2級チャレンジ #40 2級で出題されるリース会計の範囲とは?
2級で出題されるリース取引は“リース会計の一部取引のみ”であり、さらに計算方法も簡便な方法だけなので、2級の試験対策としては難易度はやや低めかといったところだ。
とはいえ、いくつかの注意点があるのでポイントを押さえて確実に自分のモノにしておこう。
リース取引とは?
リース取引とは建物や備品など特定の物件の所有者である貸手(リース会社)が借手に対して当該資産を使用する権利を与え、借手はその使用料を貸手に支払う取引のことである。
また、リース取引は契約要件によりファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の二つに分類され、それぞれ会計処理が異なるため注意が必要だ。
ファイナンス・リース取引とは?
次の二つの要件を満たすリース取引をファイナンス・リース取引という。
・解約不能(ノンキャンセラブル)
・フルペイアウト
簡単に言えば契約の解約が不能で、かつ、リース物件の使用にかかる諸経費を借手が実質的に負担するリース取引ということとになる。
ポイントは、この二つの要件を満たすものがファイナンス・リース取引に該当するという点であり、これらの要件の片方しか満たさない、または両方ともに満たさない場合は後述するオペレーティング・リースに該当する。
また、本試験では用語を問う穴埋め形式の出題も考えられるため、試験対策として『解約不能(ノンキャンセラブル)』と『フルペイアウト』という二つのキーワードを頭に入れておこう。
◎リース取引の判断ポイント
・重要キーワード:解約不要とフルペイアウト
・この二つを満たすもの → ファイナンス・リース取引
・上記以外 → オペレーティング・リース取引
なお、ファイナンス・リース取引は借手に所有権が移転するかどうかにより“所有権移転ファイナンス・リース取引”と“所有権移転外ファイナンス・リース取引”の二つに分類されるが、2級では出題範囲の記載内容からこのうち所有権移転外ファイナンス・リース取引が出題される。
これらの字面だけ眺めていると難易度が高そうに感じるが、要はリース物件を借りて、そのリース料を支払うという単純な会計処理を行うだけなので難しく考える必要はない。
リース取引の会計処理
ファイナンス・リース取引とそれ以外のリース取引とでは先にも述べたように会計処理方法が異なるので注意が必要だ。
ファイナンス・リース取引はリースという形式ではあるものの、解約不能であることと物件にかかる諸経費を負担しなければならないという点から、実質的には固定資産を割賦購入しているのと同じであるとみなして会計処理を行う。要はリース会社から分割払いで購入していると考えるのだ。
したがって固定資産の割賦購入と同様に、リース物件を“リース資産”という固定資産として計上するとともに、決算時に減価償却を行う会計処理を行うことになる(これを売買処理という)。
それ以外のリース取引は単純に固定資産を借りているだけなので、支払ったリース料(いわゆる借り賃)を“支払リース料”として費用処理するだけで良い(これを賃貸借処理という)。
それでは具体例を使って取引の仕訳を確認してみよう。
[例題]×1年4月1日、当社は次の条件でリース取引を契約した。当社の会計期間は×1年4月1日から×2年3月31日の1年間である。
・リース契約日 ×1年4月1日
・この取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する
・リース期間 3年
・リース料年額10,000円 毎年3月31日払い(後払い)
・リース資産の見積現金購入価額 27,000円
さて、ここで最初のポイントだ。
条件を読むと「この取引は所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する」とある。
設問の取引がファイナンス・リース取引かそれ以外のリース取引のいずれに該当するのかは、2級においてはこのように設問で指示されるケースになるものと考えられる。もちろん、解約不要・フルペイアウトという2つのキーワードで判断させる場合もあり得るので注意は必要だ。
それからもう一つ。
条件の最後に記載してある「リース資産の見積現金購入価額 27,000円」という資料だが、これは一体何を意味している資料なのだろうか?
ファイナンス・リース取引の仕訳例
実はファイナンス・リース取引の会計処理方法には利子込み法と利子抜き法という二つの処理方法が存在するである。
利子込み法では“リース料の支払い総額をリース資産の取得原価として計上”するのに対し、利子抜き法は“リース資産の見積現金購入価額をリース資産の取得原価として、リース料支払総額との差額を支払利息として認識する”のである(ここら辺りは固定資産の割賦購入と同じ考え方だ)。よって先のような資料が与えられることになるのだ。
それでは、例題に従って利子込み法と利子抜き法による(1)リース契約時、(2)リース料の支払い時、(3)決算時の仕訳をそれぞれ確認してみよう。
◎利子込み法
(1)リース契約時
(借方)リース資産 30,000
(貸方)リース債務 30,000
[解説]
利子込み法では支払リース料総額をリース資産の取得原価とするため、リース料年額10,000円×3年=30,000円でリース資産、ならびにリース債務を計上する。ちなみに、リース債務はリース会社に対する未払金を表す勘定科目だ。
(2)リース料の支払い時
(借方)リース債務 10,000
(貸方)現金預金 10,000
[解説]
リース料10,000円を支払ったため、リース債務が同額減少する。
(3)決算時
(借方)減価償却費 10,000
(貸方)リース資産減価償却累計額 10,000
[解説]
ファイナンス・リース取引は固定資産の購入と同様に考えるため、対象資産を残存価額ゼロ、リース期間を耐用年数として減価償却する。
減価償却費=30,000円÷3年×12/12=10,000円
◎利子抜き法
(1)リース契約時
(借方)リース資産 27,000
(貸方)リース債務 27,000
[解説]
利子抜き法では見積現金購入価額をリース資産の取得原価とする。
(2)リース料の支払い時
(借方)リース債務 9,000
(借方)支払利息 1,000
(貸方)現金預金 10,000
[解説]
支払いリース料10,000円のうち、リース債務の減少額は27,000円×1/3=9,000円であり、残り1,000円※がリース債務に係る支払利息となる。
※リース債務に係る利息部分:支払総額30,000円-リース資産の取得原価27,000円=3,000円
なお、上記の計算式で算出した3,000円は3年間の利息なので、当期計上分は3,000円÷3年=1,000円として計算する。このように利息を対応期間で均等割りして算定する方法を定額法とよび、今回のような利抜き法のことを『利抜き法(定額法)』と表記する。
(3)決算時
(借方)減価償却費 9,000
(貸方)リース資産減価償却累計額 9,000
[解説]
対象資産を残存価額ゼロ、リース期間を耐用年数として減価償却する。
減価償却費=27,000円÷3年×12/12=9,000円
オペレーティング・リース取引
ファイナンス・リース取引以外のリース取引のことをオペレーティング・リース取引と呼ぶ。
もし、今回の例題の条件が次のようになっているとオペレーティング・リース取引に該当する。条件の中に「解約可能」という言葉がある点に注目してほしい。
[例題]×1年4月1日、当社は次の条件でリース取引を契約した。当社の会計期間は×1年4月1日から×2年3月31日の1年間である。
・リース契約日 ×1年4月1日
・解約可能(または、この取引はオペレーティング・リース取引に該当する)
・リース期間 3年
・リース料年額10,000円 毎年3月31日払い(後払い)
・リース資産の見積現金購入価額 27,000円
オペレーティング・リース取引に該当する場合は特別な仕訳は必要ない。
単純に支払ったリース料(いわゆる借り賃)を支払リース料として費用計上するだけでOKだ。
(1)リース契約時
仕訳不要
(2)リース料の支払い時
(借方)支払リース料 10,000
(貸方)現金預金 10,000
(3)決算時
仕訳不要
本試験での注意点は?
今回の例題では期首にリース取引を契約し、決算時にリース料を支払うという最も単純なケースを用いたが、本試験では期中で契約を行っているケースやリース料の支払い日が決算日とズレているケースが考えられる。
そのような場合は減価償却費の月割計算や支払利息の経過勘定が必要となるので注意が必要だ。
また、今回はリース料の支払いが後払いになっていたが、前払いのケースも考えられる。
するとオペレーティング・リース取引では決算時における未払リース料や前払リース料の計上が考えられるだろう。また、ファイナンス・リース取引の利子抜き法では支払利息に対する未払利息や前払利息の計上も考えなければならない。
このように本試験では決算時の処理と絡めた出題が考えられる。
基本の仕訳が正確に行えるようになったら、ステップアップとして上記のようなケースを想定して各自で設問を考えてみるのも面白いだろう。
あーだこーだと考えることが応用力を身に着ける訓練になるので、面倒臭がらずにぜひチャレンジしてみて欲しい。
まとめ
2級で出題されるリース取引は次の3パターン。
【所有権移転外ファイナンス・リース取引】
◎利子込み法
特徴:支払リース料の総額をリース資産の取得原価にする。
[契約時]
(借方)リース資産 xxx
(貸方)リース債務 xxx
[リース料支払い時]
(借方)リース債務 xxx
(貸方)現金預金 xxx
[決算時]
(借方)減価償却費 xxx
(貸方)リース資産減価償却累計額 xxx
◎利子抜き法(定額法)
特徴:見積現金購入価額をリース資産の取得原価にする。リース料支払い総額との差額は支払利息。
[契約時]
(借方)リース資産 xxx
(貸方)リース債務 xxx
[リース料支払い時]
(借方)リース債務 xxx
(借方)支払利息 xxx
(貸方)現金預金 xxx
[決算時]
(借方)減価償却費 xxx
(貸方)リース資産減価償却累計額 xxx
【オペレーティング・リース取引】
特徴:支払ったリース料を“支払リース料”として費用処理するだけ。
[契約時]
仕訳不要
[リース料支払い時]
(借方)支払リース料 xxx
(貸方)現金預金 xxx
[決算時]
仕訳不要