試算表の作成問題で最も多い致命的なミスとは

日商簿記検定3級における試算表作成問題の出題は、程度の差はあれ基本的に次のようなパターンになる。

◎設問で与えられる資料
・先月の試算表(または月の途中までの分が集計された試算表)
・今月の未処理取引

この手の設問の解法手順は次の通りだ。

(1)未処理取引について仕訳を行う。
(2)上記の仕訳に基いて該当する勘定を修正する。
(3)問題で指示された試算表(合計試算表、残高試算表、合計残高試算表のいずれか)を作成する。

そう、設問の内容も解法手順もちっとも難しくない。
ところが、ここで致命的なミスを犯す人が多いのだ。

それはどのようなミスなのか。

具体的には合計試算表を“残高”で記入したり、残高試算表を“合計”で記入してしまうのである。
殆どの人がそんなことは有り得ないと思うだろうが、現実にはこの手のミスを犯す人が後を絶たないのだ。
実際、未処理の仕訳は間違っていないのに得点は0点という人を過去に何人も見てきた。

なぜ、このような間違いを犯すのだろう。
これには理由があって、その殆どが「思い込み」によるものなのである。

例えば設問の資料には合計試算表を与え、解答には残高試算表を要求する。
そうするとスタートの数値が合計なので、そのままつられて解答欄も合計だろうと単純に思い込んでしまうらしいのだ。
要は問題の指示をよく読んでいない、もしくは読んでいても単に読み飛ばしているだけで意識を集中していないのである。

本試験では緊張もあり、自分で思っている以上に判断力が低下している。
そのため、このように思い込みで解答を作ってしまうケースが意外と多いのだ。

これと同じような現象は他の試験でも起こる。
例えば私が若い頃に勤めていた資格スクールで担当していたワープロ検定試験では、次のようなことがあった。

その受験生は問題の指示に従い、あるビジネス文章を完成させ何度も指示と見比べて最終確認をしていた。
試験監督だった私が後ろから何気にその画面を覗きこんでみると、一見しただけでどう見てもおかしな箇所がある。
もちろん、減点対象になるような間違いだ。
ところが本人は何度もそこを指さし確認していながら、最後まで間違いに気づくことはなかったのである。

このように、試験では自分でも認識できないミスを起こしてしまうものだ。
なので、合計試算表を作るべきなのに平気で残高を記入するといった、一見有り得ない間違いも普通に起こり得るのである。

もちろん、これを回避する方法はある。
例えば、統一試験ならば解答用紙の試算表の名称(合計試算表と記載してある部分など)に目立つ印をつけて、注意が向くようにしておくだけで良い。
CBT試験だと書き込みができないので、解答用紙の試算表の名称を指さし確認して意識を向けるようにすれば良いだろう。

たったこれだけで、致命的なミスを犯す可能性が格段に低くなる。

解けているのに得点できないことくらいつまらないミスはない。
こんなつまらないミスで合格を逃すようなことがあれば、あなただって悔やんでも悔やみきれないだろう。