簿記・虎の穴 #07 あなたも知りたい!みんなも知りたい!!手形のお話し
多分これが一番じゃないかなってくらいに多いのが「為替手形」に関する質問。
この記事を読んでいる人の中にも苦手にしている人は多いんじゃないかな。
為替手形のナニが難しいのか?
結論からいうと、為替手形で引っかかっている人のほとんどは「名宛人」「指図人」「振出人」の意味をきちんと理解できていないために手形取引が具体的にイメージできないんだ。
だから設問の文章が意味不明に思えて問題文を読んだだけでパニックになっちゃうんだね。
復習しておこう。
為替手形ってのはご存知の通り、
「振出人」が「名宛人」に対して、一定の期日に、手形金額を「指図人」に支払うことを依頼する証書
だったね。
ここで確認してもらいたいのは、
「誰が」「誰に」「何をしてもらうのか?」ってコト。
そう、
為替手形の振り出しってのは「私に代わってお金を払ってもらう」ことなんだよね。
それじゃぁ、次の問題文を読んでもらえるかな。
【設問】福岡商店は、大阪商店に買掛金300,000円の支払いのため、かねて売掛金のある東京商店あての為替手形を振り出し、東京商店の引き受けを得て、大阪商店に渡した。
「誰が」「誰に」手形代金の支払いを依頼しているのかな?
そうだね。
「福岡商店」が「東京商店」に対して手形金額の支払いを依頼しているんだね。
それじゃぁ、お金を受け取る人は誰?
そう、「大阪商店」。
この文章の読み方のコツは「誰が」「誰に対して」に為替手形を振り出しているのかを読み取ることなんだ。
難しそうだって?
いや、心配は不要だよ。
だって、ちゃーんと文章に明確に記載してあるんだから。
こんなふうに…
「福岡商店は、・・・(途中省略)・・・東京商店あての為替手形を振り出し」ってね。
何のために振り出したのかについては
「大阪商店に買掛金300,000円を支払いのため」
って書いてある。
つまり、福岡商店は大阪商店に対する買掛金の支払いを東京商店に依頼しているワケだね。
このとき、
・手形を振り出した(作った)人=「振出人」
・依頼された人=手形金額の支払人=「名宛人(引受人)」
・手形を受け取る人=受取人=「指図人」
って言うんだ。
だから、それぞれの商店の立場で仕訳を考えると次のようになる。
【東京商店】
手形金額の支払いを依頼されたので「支払手形」っていう手形債務(手形金額を支払う義務)が増加する。
同時に依頼主である福岡商店に対する買掛金(仕入債務)を相殺する。
簡単に言うと、手形金額を支払う代わりに福岡商店に対する買掛金をチャラにしてもらうんだね。
例えるなら「この前の貸しをチャラにしてあげるから、今回は俺の代わりに払っといて」ってお願いされた感じかな。
よって、
(借方)買掛金 300,000 /(貸方)支払手形 300,000
となるんだ。
【大阪商店】
この人は福岡商店に対する売掛金を手形で回収しただけ。
受取手形だろうが為替手形だろうが、手形証書を受け取った時には「受取手形」っていう手形債権(手形金額を受け取る権利)が増加する。
よって、
(借方)受取手形 300,000 /(貸方)売掛金 300,000
となる。
福岡商店からみて大阪商店への「買掛金」ってことは、相手の大阪商店側からみると福岡商店に対する「売掛金」になるからね。
一方の東京商店に対しても同じことで、福岡商店からみて「売掛金」ってことは、東京商店側からみると「買掛金」となるんだ。
では、いよいよ振出人である【福岡商店】の仕訳。
もともと大阪商店に対する買掛金を支払うために為替手形を振り出しているのだから、とりあえず買掛金の減少だよね。
それから、手形金額を払ってもらう東京商店に対しては買掛金をチャラにしてあげる必要があるので買掛金の減少となる。
したがって、
(借方)買掛金 300,000 /(貸方)売掛金 300,000
となるんだ。
どうだい、難しかったかい?
このくらいならそう難しくはなかったんじゃないかな。
そうなんだ、為替手形の処理ってのは実はそんなに難しくはないんだ。
それじゃ、為替手形が苦手だって人は一体どこで引っ掛かっているんだろう?
そう、最初に話したように「名宛人」「指図人」「振出人」の役回りがよく解っていないから「設問の文章を読むのを面倒臭がって、きちんと読まない」んだ。
これが苦手意識の原因なんだね。
まぁ、分からなくもない。
だって商店名は沢山でてくるし、言い回しもなんだかややこしい。
それから、今回の例題は振出人の立場だったけど、設問によっては名宛人の立場だったり、指図人の立場だったりする。
確かに手形取引はその独特の言い回しに慣れていないと読むのがちょっと辛いよね。
でも、最初にも書いたように「誰が」「誰あてに」為替手形を振り出しているのかさえ判れば為替手形の処理は何てことないんだ。
で、これはちゃーんと設問中に明記してある。
先の設問をもう一度書いてみるよ。
今度は設問を読む際のポイントを太字にしてみるから、太字部分を意識して読んでみてね。
【設問】福岡商店は、大阪商店に買掛金300,000円の支払いのため、かねて売掛金のある東京商店あての為替手形を振り出し、東京商店の引き受けを得て、大阪商店に渡した。
どうかな。
太字部分を意識して文章を読めば、誰が「振出人」で誰が「名宛人」、誰が「指図人」なのかが判りやすいんじゃないかな。
それから、為替手形の問題を解く際に下図のような関係図を書いて解く人が多いよね。
どの出版社のテキストを読んでも為替手形の説明には(約束手形も含めて)このような図を用いて解説してある。
まぁ、由緒正しい解説図なんだ。
実際、僕も昔はこの図を使って説明していたし、たぶん多くの人が今もこの図を書きながら問題を解いていると思う。
でも、このやり方だとそのうち勉強することになる「自己宛為替手形」や「自己受為替手形」を考える時に混乱する人も多いんだ。
だから僕の生徒さんには次の図を描いて練習してもらってる。
これは実際の手形用紙を簡略化した図なんだけど、
これだと「誰が」名宛人で、「誰が」指図人で、「誰が」振出人なのかが判っていないと記入できないので「名宛人・指図人・振出人」を把握するための良い練習になるんだ。
(※参考で約束手形の分も載せておいたので活用して欲しい。)
特に「名宛人」は約束手形と為替手形では、それぞれ「受取人」と「支払人」というふうに異なるので注意が必要だ。
ちなみに「名宛」とはハガキなどの「宛名」と同じ意味で、「誰々さんへ」という意味なんだ。
だから、約束手形では「○○さんへ支払います」という意味になるし、為替手形では「○○さん、支払ってください」って意味になるんだね。
もちろん慣れてきたら図は描かなくてもOKだ。
ポイントを押さえながら練習すれば、設問の文章を読んでいるだけで「誰だ誰に対して何をしようとしているのか」が直ぐに解るようになる。
実際のところ、図を描きながら考える必要なんてこれっぽっちも無いんだ。
または、このようにシンプルに考えてもいいね。、
「誰がお金を貰えて、誰が手形金額を支払うのか」と。
極論すると、お金を貰える人が「受取手形」勘定を使って、お金を支払う人が「支払手形」勘定を使うと憶えちゃってもいいくらいだ。
このように為替手形を処理する場合は(受取手形も含めて)、
「誰が」「誰に」対して手形金額の支払いを依頼しているのかをきちんと読み取ってあげることが大切なんだ。
もちろん三者の関係図を使って確認するのもいいんだけど、
「名宛人(引受人)」「指図人(受取人)」「振出人(手形作成者)」を文章から直接読み取れるように読み方のポイントを押さえて練習しよう。
それと最大のポイントはやはり「面倒くさがらない」ことかな(笑)
それじゃ、また次回。
Vi ses !
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