ブログで学ぶ~日商簿記2級チャレンジ #03 有価証券の期末評価

2級チャレンジ

学習のポイント

有価証券は、その保有目的で次の4種類に区分される。
有価証券を適切な種類に分類できるかどうかが第一のポイントであろう。

(1)売買目的有価証券
(2)満期保有目的債券
(3)子会社株式及び関連会社株式
(4)その他有価証券

第二のポイントは、各有価証券の決算時の評価方法である。
特に2級では、(2)の満期保有目的債券の期末評価方法が頻繁に出題されるため、十分な学習&演習が必要だ。

各有価証券の期末評価方法

(1)売買目的有価証券
時価評価(※3級で学習済み)

(2)満期保有目的債券
原則は取得原価で評価。
ただし、債券金額と取得原価が異なる場合(差額が金利の調整と認められる場合)は、償却原価法によって計算された価額

(3)子会社株式及び関連会社株式
取得原価で評価。

(4)その他有価証券
時価評価(※ただし、1級の学習範囲なので2級では学習の必要なし)。

 

詳細!満期保有目的債券の評価方法

さて、今回は2級学習のメインでもある(2)満期保有目的債券の評価方法を詳しく見てみよう。
満期保有目的債券とは、その名の通り「償還期限まで保有する目的」で取得した社債や国債といった債券のことである。

満期保有目的債券の期末評価方法を知るためには、まず、債券の発行方法を知っておく必要があるだろう。
債券の発行方法とあわせて、期末評価方法を考えると理解しやすい。

債券の発行方法には「平価(へいか)発行」、「割引(わりびき)発行」、および「打歩(うちぶ)発行」という三種類の発行方法がある。

平価発行とは額面@¥100の債券を額面通りの@¥100で発行する方法のこと。
この方法で発行された債券を取得した場合は、債券金額と取得原価に差が生じないため、決算時の評価方法は原則通り、取得原価で評価することになる。
具体的には、決算時の評価替えは必要無しということである。

問題になるのは割引発行や打歩発行のケース。

割引発行は額面@¥100の債券を@¥95などの低い金額で発行する方法で、打歩発行は逆に額面@¥100の債券を@¥105などの高い金額で発行する方法である。

詳しくは「社債」の項目で述べることになるが、現時点では債券金額よりも低い(高い)金額で債券を発行する……くらいに憶えておくとよいだろう。
ちにみに、打歩発行は簿記1級や税理士試験レベルで出題される内容なので、2級で学習する必要はないであろう。

※ダフ屋が行うダフ行為の「ダフ」という言葉は、「額面より高く売る(発行する)」という意味の「打歩」の隠語だと言われている。

割引発行された債券の取得時の会計処理方法

債券金額(額面といいます)¥1,000,000の社債(償還期限5年)を期首に¥950,000で取得した場合、取得時の仕訳は次のようになる。

(借方)満期保有目的債券 950,000 /(貸方)現金預金 950,000

※仕訳で使用する勘定科目名は「満期保有目的債券」以外にも、B/Sに表示する際の科目名である「投資有価証券」や「有価証券」でも構わない。
科目の指定がある場合は指示に従うこと。

—(はじめて2級を学ぶ方はここは読み飛ばしてください)—

(補足)
投資有価証券と有価証券の使い分けは一年基準※に従うため、債券の満期日が決算日の翌日から起算して一年以内であれば「有価証券」勘定を、一年を超える場合は「投資有価証券」を用いること。

※一年基準とは
別名「ワン・イヤー・ルール」とも呼び、決算日(貸借対照表日)の翌日から起算して、一年以内に回収や支払いができるかどうかによって、その表示箇所を貸借対照表の流動区分または固定区分に分類する会計上の基準(ルール)のこと。
詳細は財務諸表作成時に詳しく解説する。

—(ここまで)—

償却原価法による評価替えとは?

この債券の償還期限は5年である。

つまり、「5年後に債券金額の¥1,000,000で買い戻してもらう」という条件で、この債券を取得したのだ。
そう、今回¥950,000で取得した債券は、5年後に¥1,000,000で買い戻してもらえることになっているのである。

債券を購入するということは、平たく言えば相手に「資金(お金)を貸す」ということ。
要は「¥950,000を貸すので、5年後に¥1,000,000で返してね」という意味なのである。

したがって、債券金額と取得原価の差額¥50,000は5年間分の利息に相当することになる。
これを難しい言葉で「金利の調整差額」という。

さらに、この金利の調整差額については、決算時に償却原価法という方法で計算し、満期保有目的債券の帳簿価額を修正しなければならないのである。
つまり、利息の分だけ、毎年「満期保有目的債券」の帳簿価額を修正するのである。

そろそろ頭の中がゴチャゴチャしてきたのではないだろうか?

OK。
それでは、要点をまとめよう。

・今回取得した満期保有目的債券は、5年間という期間を通して、その資産価値が¥950,000から¥1,000,000に増加する。

・つまり、購入時には¥950,000の価値の資産が、5年後には1,000,000の価値(¥1,000,000で買い戻してもらえる資産価値)になるため、資産の価値が年々増えていくことになる。

・したがって、帳簿価額もそれに合わせて毎年修正しなければならない。

とまぁ、こんな感じである。

また、帳簿価額に加える修正額を計算する方法を償却原価法と呼び、この方法で修正された価額を償却原価と呼ぶのである。

償却原価法の具体的な計算方法(定額法)

償却原価法だが、日商簿記検定2級では「定額法」という計算方法を学習する。
定額法の他にも利息法という計算方法(本来はこちらが原則)があるのだが、これは1級の学習範囲となるため今回は割愛する。

なお、定額法は非常に単純な計算方法で、金利の調整差額を償還期限で月割計算するだけである。
例えば、今回の債券を当期首に取得した場合、償却原価法による計算は次のようになる。

50,000×12ヶ月/60ヶ月=¥10,000

また、この債券を10月1日に取得した場合の償却原価法の計算方法は次の通りである(会計期間は4月1日から3月31日の1年間とする)。

50,000×6ヶ月/60ヶ月=¥5,000

月割計算では、月数の数え間違いが目立つ。
数え間違いの無いよう注意しよう。

さて、償却原価法(定額法)で修正金額が計算できたら、次の仕訳で満期保有目的債券の帳簿価額を修正しておけば良い。

(借方)満期保有目的債券 10,000 / 有価証券利息 10,000

※有価証券利息勘定は(受取)有価証券利息という収益勘定のこと。

以上が償却原価法を用いた満期保有目的債券の期末評価・修正方法である。
この償却原価法という計算方法は、後に学習することになる「社債」の章でも使うため、計算テクニックだけではなく、その考え方(意味)もしっかりと自分のものにしておいて欲しい。

【おまけ】受取利息との違い

有価証券利息との区別に迷うものに、受取利息がある。
企業会計原則には、特に有価証券利息と受取利息とを区別すべきとする規定はないが、財務諸表規則(「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」)で受取利息と有価証券利息とを区別して表示するように規定されている。

日商簿記検定2級が対象にしているのは、個人商店ではなく、金融商品取引法の規制の対象となる株式会社である。
したがって、原則として両者を区別しなければならない。
問題を解く際には、勘定科目を間違えないよう気をつけよう。

 

まとめ

満期保有目的債券の評価替えは、決算修正事項の一項目として出題されるケースが多い。
2級では、割引発行によって取得したパターンでしか出題されず、内容的にも難しくはないのだが、期中に取得した場合の月割計算でミスするケースが非常に多い。
月割計算では、指折り数えて確実に計算しよう。

また、最近の出題傾向を考えると、簡単な筆記問題(文章の穴埋め問題等)による出題も十分に考えられる。
計算以外にも、平価発行や割引発行といった関連用語や、償却原価法の意味(考え方)などを自分なりに簡単にまとめてみるのも良いだろう。

一緒に簿記を学びませんか?

簿記塾オッジでは、6月検定に向けた「マンツーマンで学ぶ・インターネット日商簿記2級講座」の受講生を募集しています。

ある簡単なルールを知った途端、
あなたは、
問題集をスラスラと解けるようになり、
退屈で苦痛な暗記学習から解放されます。

「最後まで、挫折せずに学ぶには?」

その答えがここにあります。

個人指導でじっくりと学びたい方。
合格まで徹底的に指導してもらいたい方。

>>>今すぐ内容をご確認ください。