ブログで学ぶ〜日商簿記2級チャレンジ

ブログで学ぶ〜日商簿記2級チャレンジ #36 自社利用のソフトウェアはこう解け!

ソフトウェアの処理は本来1級の範囲なのだが、ITの普及によって多くの企業でソフトウェアを資産計上していることを考慮して、自社利用のソフトウェアに限定して2級でも出題されることとなった。
とは言うものの、内容的には無形固定資産の取得と同じなので難しく考える必要はない。

『自社利用』というキーワードがポイント!

ソフトウェアには自社利用のソフトウェア以外にも、顧客に提供するソフトウェア(受注製作や市販目的)がある。このうち2級で学習するのは自社利用のソフトウェアに限定される。
自社利用のソフトウェアとは、その名の通り自社で利用するために購入(または制作)したソフトウェアのことだ。

自社利用のソフトウェアは『そのソフトウェアの利用することによって、将来の収益獲得または将来の費用削減が確実であることが認められるかどうか』で会計処理方法が区別される点に注意が必要だ。

◎将来の収益獲得または将来の費用削減が確実であることが認められる場合
→この場合は購入時に無形固定資産として計上し、決算時に適切な減価償却方法で償却する。

◎将来の収益獲得または将来の費用削減が確実であることが認められない場合や、確実であるかどうか不明な場合
→この場合は購入時に費用として計上する。

なお、将来の収益獲得または将来の費用削減が確実かどうかについては各自で判断するのではなく、問題文で指示されるので安心して欲しい。

具体的な会計処理

【例題】

(1)肥後商事株式会社は、将来の経費削減に確実に役立つので、自社利用目的でソフトウェア¥200,000を購入し、代金は小切手を振り出して支払った。

[解説]設問の文中に「将来の経費削減に確実に役立つので」とあるため、無形固定資産として計上する。

[購入時の仕訳(資産計上の場合)]

(借方)ソフトウェア* 200,000
(貸方)当座預金    200,000

*商標権やのれんと同じ無形固定資産の区分に計上される資産勘定

(2)肥後商事株式会社は、決算にあたり上記の自社利用目的で購入したソフトウェア(取得原価¥200,000)について定額法により償却した。なお、このソフトウェアの利用可能期間は5年と見積もられている。

[解説]無形固定資産として計上したソフトウェアを償却する。なお、償却方法は問題の指示に従うこと。また、記帳方法は他の無形固定資産と同様に直接法にて行う。

[決算時の仕訳(償却)]

(借方)ソフトウェア償却 40,000
(貸方)ソフトウェア   40,000

(3)長崎株式会社は、自社利用目的でソフトウェア¥250,000を購入し、代金は小切手を振り出して支払った。なお、将来の経費削減に役立つかどうかは不明である。

[解説]設問の文中に「将来の経費削減に役立つかどうかは不明」とあるため、無形固定資産ではなく費用として計上する。なお、費用計上する際の勘定科目には研究開発費勘定を用いること。

(借方)研究開発費 250,000
(貸方)当座預金  250,000

ソフトウェア仮勘定に要注意!

自社利用のために自社でソフトウェアを制作している場合、制作途中のソフトウェアに関しては、その制作に要した費用をいったんソフトウェア仮勘定(資産の勘定)に集計しておき、事業供用時にソフトウェア仮勘定からソフトウェア勘定へ振替を行うことになる。
要は建設仮勘定と同じだ。

具体的な仕訳例で確認しておこう。

【例題】

(1)自社利用のソフトウェアの制作費用として¥500,000を現金で支払った。なお、このソフトウェアは制作途中であり、研究開発費に該当する部分は無い。

(借方)ソフトウェア仮勘定 500,000
(貸方)現 金       500,000

(2)上記のソフトウェアが完成し、上記の仮勘定をソフトウェア勘定へ振替えた。

(借方)ソフトウェア    500,000
(貸方)ソフトウェア仮勘定 500,000

最後に

ソフトウェアといっても2級で出題されるのは自社利用の場合のみである。
さらに想定される出題としては、ほぼ資産計上するパターンになると思ってもらって良いだろう。

もちろん費用計上するパターンの出題の可能性が全くのゼロというワケではない。実際、研究開発費は第142回の第1問仕訳問題でも出題されているし、2級の「商業簿記標準・許容勘定科目表」の一覧にも掲載されている。
だが、ソフトウェアの会計処理で研究開発費を用いる場合は、そもそも1級レベルの内容を学習しておく必要があるため、これが2級で出題される可能性は低いと思われる。

したがって2級では資産計上するパターンを中心にその会計処理方法を押さえておけばOKだ。
また、ソフトウェア仮勘定も出題されやすい項目なので十分に注意しておきたい。